情報は常に不足している、だからマニ車を回そう
Information is Never Enough, So just Turn the Prayer Wheel, 2024-1
W2000×D2000×H2400 mm
mixed media
Photo by 赵子臻
作品は、観客の手によって回転させる装置です。 インスピレーションは、チベット仏教の中で功徳を積み重ねる修行のための道具であ る「マニ車」、そして 21 世紀のクリーンエネルギーの希望として注目されている「核 融合エネルギー発電装置」です。一見関連性のないこれらの要素が「回転」を共通点と し、物理的な動きだけでなく、未来への期待を象徴する「楽観」も含まれています。 そして作品のコアの部分は、回転数を記録する LED カウンターです。観客が作品を右 に回すとの数字が増加し、逆方向に回すと数字が減少するシステムになります。簡単な 仕組みになりますが、センサーが反応する磁石の配置とカウンターが取り付けられた内 軸が反対方向に回転することによって、カウンターが視野から消えても、その変化に簡 単に気付くことはできません。観客は自分の位置を変えるときにのみ、カウンターの変 化の瞬間を目撃することができます。
現在の社会情勢において、技術の進化、グローバリゼーションの衰退、社会の分断、 平和危機など多くの不確実性に直面しています。情報が不足している中で、人々は物事 に対して判断を下さねばならない状況があり、「楽観」の背後に潜む二重性を無視でき ません。
現実は「情報は永遠に足りない」と変えることは難しいかもしれませんが、私たちは 単に前を見るだけでなく、過去を振り返り、考えることが必要です。そうすることで、 より良い答えに近づくことができるかもしれません。
2023年度武蔵野美術大学卒業・修了制作展【優秀賞】
会期:2024年1月12日〜1月15日
会場:武蔵野美術大学 鷹の台キャンパス 2号館3F 301号室